内定取り消しは許されない? 実例をふまえた“認められる”ケースと“認められない”ケースを解説
企業採用において、内定を出した応募者に対し、やむを得ず内定を取り消すケースは少なくありません。
しかし、取り消しが成立するのは正当な理由として認められた場合のみ。厳しい条件をクリアした上で、適正な手段を踏む必要があるのです。
そこで本記事では、内定取り消しが“認められる”ケースと“認められない”ケースを解説します。
実例もふまえていくので、企業の採用担当者の方はご参考ください。
目次
内定取り消しとは
内定取り消しとは、企業が採用予定・就任予定の人材に出した「内定」を取り消すことを意味します。
一方で、内定者が入社の意思を取り消すことは内定辞退になります。
法的に内定は、企業と採用候補者の間で入社(雇用)の約束ができた状態を指しますが、労働基準法において厳密な制限はありません。
内定取り消しが企業に与える影響は?
前提として、内定取り消しは合法的に「可能」です。しかしながら、企業が負うリスクも存在します。
①内定者から訴訟を起こされるリスク
②内定を取り消した企業として公表されるリスク
詳しくは後述にありますが、そもそも企業側から一方的に内定を取り消してしまうと訴訟問題に発展するケースも少なくありません。内定を取り消す場合は、内定者に納得してもらうため、取り消しの理由をしっかり説明する等の手順を踏む必要があります。
また、企業側の不当な理由で内定取り消しを行うと、ペナルティとして厚生労働省のウェブサイトで企業名が公表される可能性も。企業イメージにも影響するため、少なからずリスクを負うでしょう。
内定取り消しが“認められる”ケース
では、正当な理由として内定取り消しが“認められる”ケースはどんな場合なのでしょうか。
さまざまなケースがありますが、一貫しているのは「採用内定時に知ることができない」事実が発覚し、さらに「客観的に合理的と認められた」場合に限られます。
SNSで不適切な投稿をした
内定者がSNSで不適切な言動を行った場合、内定取り消しが認められる可能性があります。
企業が複数のSNSをチェックし内定者の名前を調べた結果、不適切な発言が見つかって内定取り消しとなったケースは珍しくありません。
こういった行為は従業員として相応しくないと判断でき、正当な解雇理由となり得ます。
自身の経歴に嘘をついた
面接等で経歴に嘘をつかれた場合も、立派な経歴詐称として内定取り消し事由に該当します。
ひとつ注意点があるとすれば、履歴書に虚偽記載があっただけでは大抵の場合認められません。詐称の内容が重大である限り有効となるのです。
大学等を卒業できなかった
大学卒を対象とした募集の内定者が大学を卒業できなければ、内定取り消しの正当な理由となり得ます。
入社日までに入社前提条件をクリアできなかったこととなるため、合法的に認められるのです。
健康上の問題が発覚した
採用内定後に病気が発覚し、入社日から就労できないと分かった場合、内定取り消しを行うことが可能です。
しかし、数か月程度の療養で就労できる見込みがあると医師の診断を受けた場合は、内定取り消しが無効となるリスクもあるので注意が必要です。
犯罪歴がある
内定後に犯罪歴が発覚したり、刑事事件を起こしたりした場合は、判例上で内定取り消しが認められています。
日本電信電話公社では、内定者が公安条例違反で現行犯逮捕され、起訴猶予処分を受けたことから内定取り消しとなった事例があります。
内定後の妊娠発覚
内定後における妊娠発覚も、採用内定時に知ることができない且つ入社日に就労することも叶いません。
さらに一定期間以上の休養が必要なことから、内定取り消しが認められます。
実際にあった! 内定取り消しが“認められない”ケース
一方で、内定取り消しが“認められない”ケースもあります。今回は、実際におきた事例を3つ見ていきましょう。
大日本印刷「陰気な印象で…」
通称「大日本印刷事件」と呼ばれ、内定取り消しが無効とされた判例として有名な事例です。
企業がある新卒内定者に対して突然、採用取り消しを言い渡したのですが、その理由が驚愕。なんと「陰気な印象だから」でした。
当然ながら内定者の方は納得がいかず、訴訟を起こして取り消し無効となりました。
女性アナウンサー「ホステスバイト歴で…」
当時大学生だった笹崎里菜さんは、日本テレビより2015年4月入社の内定をもらいました。
しかし、銀座クラブでのアルバイト経験が「アナウンサーに求められる清廉性に適していない」とし内定取り消しを決定。
その後、全面的に戦う姿勢を見せていた日本テレビですが、和解の提案を受け入れて笹崎さんは入社を果たしました。
コーセーアールイー「内々定を取り消し…」
企業から採用の内々定を受けていたWさんは、正式な採用内定通知書の授与直前に取り消しをされました。
その後、始期付解約権留保付きの労働契約に反すると主張し、損害賠償および慰謝料の支払いを求めます。
結果、内々定は内定のように正式な労働契約として認められないとなりましたが、企業の孫義足に反する行為に対して、慰謝料請求は認められる形に終わりました。
まとめ
内定取り消しは、正当な理由かつ適正な手段を踏めば認められますが、その一方で企業側が負うリスクがあることも忘れてはいけません。
今回ご紹介したようなケースに直面した場合は、慎重に判断して物事を進めていきましょう。
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